歯科衛生士の現場から

災害歯科保健歯科衛生士の役割

災害に対する備えと知識の普及啓発活動

所属:和歌山県歯科衛生士会

甚大な災害が起こると、避難所生活を余儀なくされます。発災直後の避難所では水不足が起こりやすく、歯磨きなどの口腔のケアが疎かになってしまいます。口腔のケアが疎かになると、う蝕の多発、歯周病の悪化などが起こります。特に身体の抵抗力が低い高齢者では誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが増大し、全身の健康に影響を与えることがわかっています。

災害時こそ口腔のケアが重要であることを広く知ってもらうため「災害に対する備えと知識の普及啓発活動」を実施しています。

1.平時から災害について学んでいます

本会では、災害時の口腔保健に関する知識の備えと災害時に支援ができる歯科衛生士の育成を目的とした研修会を開催しています。

〇2018年度「災害の備えについて~皆で考えよう」

「会員の安否確認方法」「誤嚥性肺炎を防ぐために行うこと」「診療室で災害が起こった時の対策」「緊急時の連絡方法」「県民向けのリーフレットとポスターの内容」をグループ毎で選択し、討議・発表を行いました。

〇2019年度「勤務先で災害が起こったら」

「発災前の準備」「発災時の対策、避難マニュアル」「訪問先で発災した時の対策」について、各診療所、会員の派遣先である休日応急センターと障害児(者)・高齢者歯科口腔保健センターでの各勤務時を想定し、討議・発表を行いました。

講演
グループ討議

2019年度の研修会の講演とグループ討議の様子

〇2021年度「災害と歯科保健・医療のかかわり」

足立了平先生に、歯科衛生士が災害歯科保健に関わる重要性についてご講演いただきました。

〇2022年度「フォーラム伝達会」「災害関連死や避難所における歯科の役割(動画視聴)」を行いました。

〇2023年度「災害時 私たちできること」「フォーラム伝達とマニュアル2022の説明」を行いました。

2.平時から連絡の取れる体制を作っています

2021年度から会員を地域別・連絡形態別に14グループに分け、災害時安否確認連絡体制と安否確認を行う基準(図①)を構築しました。2023年度の安否テストでは、ほぼ全員の返答を得られ、うまく活用できました。そして、2023年6月の地域的な水害発生時の被災状況の把握には、連絡体制が有効に活用できました。

活用しながら気付いた問題点などは意見を出し合い、ブラッシュアップしていくようにしています。

図①

安否確認を行う基準

  • 地震の場合:震度5弱以上
  • 風水害の場合:河川の氾濫、土砂崩れが起こった地域
  • その他:予想外の停電、断水などが発生した場合

3.平時から災害に備えています

本会では、和歌山県歯科医師会・和歌山県歯科技工士会と「災害時の歯科口腔保健に係る医療救護班の派遣についての協定書」を2019年に締結しています。

また、「JDATわかやま2023チーム編成」では研修を終えた災害歯科保健歯科衛生士16名が登録し、発災時は歯科医師、歯科技工士とともに活動することになっています。さらに(図②)の準備ができています。

図②

  • 災害時安否確認体制
  • 活動時着用ベスト
  • アルコール消毒ジェル
  • フェイスシールド
  • 関係機関との協力体制の構築
  • 使い捨てマスク
  • 長期保存用液体歯みがき
  • 災害時マニュアル(平時の備え)

4.「避難袋にお口のケアグッズを!」推進運動について

このイベントでは災害時の口腔ケアの重要性を知っていただくために、災害時の口腔ケアに関するリーフレットとデンタルリンス、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの啓発グッズを配布しています。これまで、和歌山県と各企業((株)サンスター、(株)デンタルプロ)の支援をいただき実施しています。

〇2018年度は、JR和歌山駅前イベント広場にて実施しました。

〇2019年度は、県内6か所の駅で実施しました。この時、和歌山駅では、NHK和歌山放送局に活動の様子を取材していただき、夕方のニュース番組で活動の様子が放送されました。

〇新型コロナウイルス感染症の影響により活動を休止していましたが、2023年度からは推進運動を再開し(株)オークワの県内2か所の店舗で活動を実施することができました。

2018年活動の様子(JR和歌山駅)2018年度活動の様子(JR和歌山駅)
2019年活動の様子(JR紀伊田辺駅)2019年度活動の様子(JR紀伊田辺駅)

5.ポスター・リーフレット作成と配布

2018年に(株)サンスターにご協力いただき、ポスターを作成しました。2019年には本会オリジナルのポスターとリーフレットを作成し、県内の公共施設など47か所に掲示、配置していただきました。

ポスター1本会オリジナルポスター
ポスター2リーフレット
※リーフレットはHPよりダウンロード可

6.ホームページやSNSを活用した啓発活動

情報発信の一部紹介1
情報発信の一部紹介2

情報発信の一部紹介(Instagram・Facebookより)

ホームページやSNSを活用して定期的に防災関連の情報を発信しています。「誤嚥性肺炎が起こりやすい原因」「水不足時の口腔清掃方法」「避難袋に口腔ケア用品を入れておくこと」「定期的にかかりつけ歯科医院を受診し良いお口を保っておくこと」が重要であると啓発しています。

7.今後の展望

2019年防災活動時(JR和歌山駅)2019年防災活動時(JR和歌山駅)

今後も「災害歯科保健歯科衛生士の育成」と「避難袋にお口のケアグッズを!」推進運動、そしてSNSなどを活用した啓発活動を継続していきたいと考えます。

和歌山県歯科衛生士会は、さまざまな場面において県民の口腔の健康増進に寄与できるよう活動したいと考えています。